好きなものシリーズ③『宗さん』

2018年04月02日

はじめて出会ったのは僕の一年目の一月。
僕ら新入団選手たちは福岡の合宿所で合同自主トレをやっていた。
日にちが経つにつれ先輩たちが自主トレ先から帰ってきて僕らと同じ空間で体を動かし始める。

「うわ~、松中さん体でけ~!」
「小久保さん本物だぁ~!」

そんな感動や緊張に包まれている中、宗さんも自主トレ先から帰ってきた。

「ん?この人もプロの選手?なんかその辺の兄ちゃんみたいだな」

これが宗さんへの第一印象である。

自主トレが終わると次はいよいよキャンプイン。当然僕はB組スタートで、宗さんは
A組スタート。
そこから約一か月間ほぼ顔を合わせる事はなかった。

キャンプが終わると次は教育リーグが始まる。
そこで僕はなんといきなり掌の骨(有鈎骨)を骨折し、手術、入院を余儀なくされた。
プロに入ってしょっぱなからマイナススタート。
絶望感や焦りを感じながら入院していると宗さんが友達(現ムネさんのトレーナー)とお見舞いに来てくれた。

「井手くーん!お見舞いに来たよー!」

ほぼ話したことのない新人の僕のお見舞いに来てくれた。素直に嬉しかった。

「で、これプレゼントね!これ見て元気だせよ!」

宗さんが持ってきた見舞いの品、エ〇本3冊ww‼しかもこれだけww

そこから急速に距離が縮まり、約15年間自主トレを一緒にやった。
死ぬほど酒を飲んだし、死ぬほど笑った。そして死ぬほど練習した。
僕には兄ちゃんがいないし宗さんには弟がいない。だから兄弟みたいに感じていたのかもしれない。

6年目の一軍の試合で僕がミスして負けた試合があった。
試合後ロッカーで立てないくらい僕は泣いてしまってた。(いま考えるとはずかしい、、)
その時にも宗さんは隣に座って慰めてくれた。
家まで連れて帰ってくれたし、帰った後も長文のメールもくれた。こんなに後輩想いの人はいないと思う。

僕が戦力外を受けた日、宗さんに電話した。コールしている時点で僕はもう涙目になっていた。
「宗さん、俺、クビになったわ、、」
言葉の途中からもう涙腺は崩壊しそうになっていた。

だが、意外な言葉が返ってくる。
「やったな!正太郎!プロ15年は凄いぞ!もう勝ったぞ!勝ち組だ!」

言葉の意味は理解できなかったが、ケラケラ笑いながらしゃべる宗さんに凄くポジティブな気持ちにさせてもらった。
出かかってた涙も笑いの涙に変わり、流れ出た。

そして先日、宗さんの退団発表。ちょっとショックだったがまだ引退はしていない。
多分あの人の事だから明るく元気にみんなの前にまた戻ってくると思う。

もしこのまま引退ってなったら、
「宗さんやったな!プロ18年くらいやってメジャーまで行って!また俺らで楽しいことやろうや!」

こう言ってやろうと思う。エ〇本3冊土産に持って。

                              ちゃお

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